【旧道保存会的…B級湖沼カタログ】 ページ 1 監修:堀淳一
<B級湖沼とは?>
ここでご紹介する湖沼群は、国土地理院発行が発行する北海道内2万5千分1、または5万分1地形図に見つけることのできる名称のない数々の湖沼の中から、次の条件を基準に「B級湖沼」としたものです。原則として自然成因と思われるもの、人工的なものでも歴史的存在意義の強いと思われるもの、一般にあまり知られていないもの、接近が容易ではないものなどをその選考基準としています。したがって、すでに有名観光地となっている湖や、近寄りがたいものでも広く知られているような湖や沼は登場しません。
なお、各紹介ページ中、湖沼名を”[ ]”でくくっているものは、そもそも地形図上に名称が表記されていないなどの理由から、便宜上、独自の判断で(勝手に)命名したものです。一般的な呼び名ではありませんのでご注意ください。
<ご注意!>
この【旧道保存会的…B級湖沼カタログ】に掲載されている湖沼についてそのほとんどは、およそ2007年ごろまでに実際に踏査した記録であり、すでに経年変化により状況が著しく変化している可能性もあります。またアクセスルートに何らかの通行障害(ヒグマの生息地帯、崩落による通行困難など)の可能性が高いところも含まれます。このページを参考に「出かけられたい」という方がおられても、当方ではその行程におけるいっさいの責任を負いかねますのでご注意ください。
浜厚真湖沼群
厚真町の平野部を囲む丘陵の谷の出口には、多数の海跡湖がある。大きく分けて富野以北の厚真川流域にあるものと、浜厚真を中心とする入鹿別川西岸にあるものとの二群にグループ分けされる。
前者後者とも、アクセス可能のものはすべて見たが、私がB級湖沼として紹介してよいと思うものは後者の中の五沼のみだ。
どちらの群も海に近い平野への谷の出口にある海跡湖という意味で、性格は似たようなもの──比較的大味、また相互に似ているのだが、私見としては後者のほうがやや味わいに富む、と感じたのだ。ただ群によって行った日が異なるので、その日の空模様、風の具合、季節の相違などによって印象が大いに左右されるため、どのみち判断は主観的なものにすぎないが。
該当地形図
2万5千分1図
「上厚真」「軽舞」
Vol、10
写真:堀 淳一
厚真町
[浜厚真上沼] [浜厚真沼] 大沼、長沼、三宅沼
※[ ]は独自の判断で命名した名称であることを示しています。
[浜厚真上沼]
大沼
三宅沼
[浜厚真沼]
長沼
神の子池
名の通り、小さいが味わいは無上の池だ。摩周湖に由来すると思われる湧き水から成り、札鶴川の支流の源流になっている。水は透明で、そこの湧水孔が明瞭に見える。ゆらゆら揺れる水の風情に眺め入っていると、時間を忘れる。
該当地形図
2万5千分1図「摩周湖北部」
Vol、9
写真:久保ヒデキ
場所は釧網線の緑駅前から清里峠へ向かう道の途中から右(西)に入って2キロ半ほど行ったところ。クルマで容易に行ける点がB級湖沼としてはちょっと難だが、美しさと味わいの点でB級湖沼と認めないわけにはいかないだろう。
ちなみに我々は前記の分岐点から歩いていった。そのほうが池の味わいが倍加するから。
清里町
カムイト沼
浅茅野から北へ2キロほどの間、東から西へ国道238号、自転車専用道路(旧天北線の廃線跡)、国道238号の旧道、の3本が、ほぼ並行して走っている。
浅茅野からこの旧道を2キロ半ばかり北に行くと、左側に小さな駐車場(土がむき出しになったままの空地だが、まわりに木が多いのでちょっとした公園のようでもある)がある。この駐車場のすぐ西、5mほど下がカムイト沼だ。岸へ降りてゆく坂路と沼の西岸沿いの遊歩道が整備されていて、沼の眺めをゆっくりたのしむことができる。
行くのは簡単、岸の散歩も簡単だから、この沼をB級湖沼とするのにはいささかためらいがあるのだが、観光コースには入っていないようだし、知名度は低いと思われる。また沼もそのまわりも
該当地形図
2万5千分1図「浅茅野」
Vol、8
写真:堀淳一
静けさたっぷりだから、まあB級湖沼に入れてやってもよいだろう。ただし我々の訪問(2003年7月)以降にもし俗化が進んでいたら、失格にせずばなるまい。
猿払村
瓢箪沼
浅茅野の南方に第二沼、無名沼、瓢箪沼の三湖沼が群がっている。三ついっしょに一つの湿原にくるまれて。
しかし、近づける道路も小径も踏み跡もなく、南方の台地から遠望することしかできない。沼の右手向こうに見える沼が無名沼だが、かつては二つがつながってヒョウタンの形になっていた。それでこの名があるのだ。
第二沼は森のうしろにあって、右端の片鱗が見えるのみである。
もっと近くに寄らないとB級湖沼か否かの判定は下しにくいのだが、湿原と木々に囲まれたその姿から推して、可と判断してよさそうだ。
訪問期日は2003年7月。
該当地形図
2万5千分1図「浅茅野」
Vol、7
写真:堀淳一
猿払村
[長応小沼]
長応沼の東岸に沿う路は途中でしばらく100mほど沼から離れる。最も離れたところにポツンと小さな沼がある。
沼のまわり──長応沼と路の間──は牛の放牧場になっていて、強固なバラ線で囲まれているため、沼に近寄ることはできないが、バラ線越しに小さく見えるその姿には、何か人を魅するものがある。
昔はバラ線もなく牛もおらず、岸まで行けて、木々を映して白く光る水面がとてもよかったのだが──
「昔」というのは1976年6月。直近の訪問は2002年9月。
追記。長応小沼はかつての長応沼の、すなわちかつての天塩川の流路の、痕跡らしい。長応沼と長応小沼はいわば「二重河跡湖」なのだ。
該当地形図
2万5千分1図「安牛」
Vol、6
写真:堀淳一
※[ ]は独自の判断で命名した名称であることを示しています。
幌延町
[長応沼]
上幌延駅のすぐ南側に小さな丘があって(これはどうやらかつてタプコプと呼ばれていたらしい)、その上に長応寺というお寺がのっている。
この丘のまたすぐ南に、西北西、東南東方向の長軸を持つ楕円形の天塩川河跡湖がある。無名だが、近くにある長応寺にちなんで「長応沼」と呼ぶことにした。
長応沼の東岸に沿って、細い道が続いているが、これの途中から「袋地」に入ってゆく土堤路に足を踏み入れるとすぐ、両側に沼を見下ろす土堤の上に出る。
沼の眺めは「幌延沼」に勝るとも劣らずいい。訪問時期は2002年9月。
該当地形図
2万5千分1図「安牛」
Vol、5
写真:堀淳一
※[ ]は独自の判断で命名した名称であることを示しています。
幌延町
メグマ沼
メグマ沼は稚内から沼川を経て幌延に抜ける道道121号から分かれて稚内空港前を経由、稚内ゴルフ場に至る道の途中から湿原に入る木道を行けば簡単に到達できる。空港待合室の東方わずか1キロあまり。
しかし沼の西方に広がる湿原の中の木道を歩く人の姿は稀だし、岸に建物や休憩所があるわけでもなく、この世離れした水が茫漠と波立つ、なかなかいい沼だ。観光バスはもちろん岸まで行けず、静けさも(時折り襲ってくる飛行機の爆音を除いて──これも一日数回にすぎない)抜群だ。B級湖沼の資格はまずまずあるだろう。
該当地形図
2万5千分1図「声問」
Vol、4
写真:堀淳一
稚内市
[幌延沼]
幌延市街のすぐ南に、北西、南東方向を長軸とする長楕円形をした天塩川河跡湖がある。とくに名はないようなので、勝手に「幌延沼」と呼んでおく。
これの北東岸から沼を渡って、沼に囲まれた袋地(という地名がついているわけではないが)に入ってゆく土堤道がある。この土堤道から眺める沼は、どちらの側もなかなかいい。幌延駅から歩いて25分ぐらいで簡単に行けるのだが、これをわざわざ見に来る人はめったにいないだろうし、観光化の気配もないから、B級湖沼の一つとして認めてよいだろう。
訪問時は2002年9月。
該当地形図
2万5千分1図「幌延」
Vol、3
写真:堀淳一
※[ ]は独自の判断で命名した名称であることを示しています。
幌延町
[子泣沼]と兜沼
兜沼の東岸にある兜沼公園の南端から南へ向かう道路を約1キロ行くと、心地よい草の道が右(西)に分かれている。それを辿ってゆくと階段にぶつかり、それを登ると水ぎわの展望台に出る。
水は兜沼の南にある無名沼。平面形(地図上の形)が泣いている子供の横向き半身像のように見えるので、「子泣沼」と名づけた。
湿原の中の沼なのでいささか単調なのを免れないが、立派な展望台があるのに誰も来ない静けさと風の囁きとさわさわと波立つ広い水がいい。
訪問時期は2002年9月。
兜沼は列車からも見え、兜沼から歩いてすぐだし、また岸に兜沼公園もあるので、B級湖沼とはいい難いのだが、地の利があるわりには訪れてじっくり見る人がごく少ない。という意味で「準B級」に入れてよかろう。
訪問時期は同上。
左は”子泣沼”。北北西を望む。下2点は兜沼。左が兜沼公園南端から。右が兜沼駅西方より。
該当地形図
2万5千分1図「兜沼」
Vol、2
写真:堀淳一
※[ ]は独自の判断で命名した名称であることを示しています。
豊富町
[浅茅沼]
浅茅野で国道238号から西に分かれて南西へ向かい、宗谷丘陵を越えて豊富に達する道がある。はじめ一直線に南西に延びるが、2キロほど行ったところで右に折れる。
しかし、折れずにそのまままっすぐ進む道があり、これに入るとすぐ、左手に沼がある。ただし草が高くて、道からはほとんど見えない。
そこで手前左側の丘に登ってゆくかすかな踏み跡を辿る。と、右手に沼が見下ろされる。木が多くて沼全体を見渡すのはむずかしいけれども、緑に囲まれて蒼い、なかなかいい沼だということは分かる。
地形図上では無名だが、浅茅野に近いし、このアサジノという地名が好きなので、沼も「浅茅沼」と呼ぶことにした。
写真は、北東の丘から見下ろした無名沼。
該当地形図
2万5千分1図「浅茅野」
Vol、1
写真:堀淳一
※[ ]は独自の判断で命名した名称であることを示しています。
猿払村