【旧道ロケーション】・北海道旧道保存会メンバーによる旧道歩きの記録です。

ご注意・ここに紹介する旧道等は、実際に歩いたのが2000年から2010にかけてのものでかなり時間を経過しておりますので、現在ではほとんど消滅しているか、進入が困難であることが予想されます。「ツアーガイド」としてはまったく役に立ちませんので、あくまでも当時の記録としてお楽しみください。(本文は当時のHPに掲載していたものです)

国道229号線に見つけた旧道跡~2001冬

 北海道の西海岸、江差から小樽へ至る全長300kmあまりの国道229号線は、そのほぼ全線が複雑に入り組んだ海岸沿いにルートを取っています。歴史的に見ても非常に古く、江戸末期の松前時代に”追ニシン”によって和人漁師たちが続々と北上し、各地に集落ができるにしたがってその連絡路が造られていったことに始まります。小砂子山道、太櫓越、茂津多越など険しい山道がそのルーツであるとも言えるのです。その後、明治、大正と開拓が進むにつれて少しづつ手が加えられ、徐々にその道はつながっていったのですが、”車が通ることのできる”道路となるのは1960年代と、比較的最近のことなのです。

 

 その国道229号線は現在、1970年ごろから本格的に始まっていた国道工事によって快適なドライブが楽しめる道となっていますが、近年、岩盤崩落の危険性から現ルートが見直され、さらに新トンネルが掘られるなどの改良工事が随所で進められています。このページでは、昨年12月、この国道を走った際に見かけた、太櫓(ふとろ)~須築(すっき)間の旧道の一部を簡単に紹介します。そのほとんどはこの30年以内に使われなくなった”旧国道”です。冬ということもあり、”旧道歩き”はさすがにかないませんが、逆に遠くから眺める分には積雪のために”旧道スジ”がわかりやすいという利点があります。

桧山トンネル北側付近

 地図上:1 の国道から見える旧道。ガードレールが残されている。夏になれば草木で埋もれて見えなくなる。

 地図上:2 の位置から桧山トンネル方向の現在の国道。拡幅後は非常に走りやすい快適な道となった。

マップ上の赤線が1980年代まで使用されていた旧道。

  地図上:2 の位置で発見。沢を巻くように急勾配のカーブがあり、その途中に標識が残されていた。

瀬棚 三杉トンネル付近

瀬棚町の名所”三本杉岩”を望む海岸に張り出した断崖を貫く三杉トンネル。完成は1975年。そのすぐ隣にかつて使用されていた旧トンネルの跡が残る。

虻羅(あぶら)周辺

 瀬棚を過ぎてさらに北上するとまもなく虻羅漁港となるが、車窓から、漁港の向こう側に断崖に沿って伸びる旧道の痕跡を見ることができる。マップ赤線部が旧道。通称”クズレ”また古くは”蝦夷親不知”と呼ばれた断崖の下を、いくつもの小さなトンネルを鉄製の覆道で結び、走っていた。

 旧道部のアップ。いかにも華奢な覆道がトンネルとともに続く。

 虻羅漁港外れにある旧国道への分岐点。現在はもちろん通行止め。

 虻羅トンネルは1972年に竣工。美谷側口の旧道との合流点からは、大量の岩盤崩落で道筋をたどることができなくなっている。30年が過ぎ、旧道は完全に消滅してしまった。

美谷(びや)周辺

  地図上:1 さらに北上し、美谷の漁港に近づくと、”獅子岩”が見えてくる。

現在の国道は漁港手前から美谷トンネルに入るが、これは1978年に完成したもの。それまで旧道は漁港の海岸沿いに進み、”獅子岩”のすぐ脇で小さな素掘りのトンネルをくぐっていた。

 地図上:2 美谷漁港を過ぎて振り返ると、山側にも小さな素掘りのトンネル。ここにもかつての道路の跡が残る。現在の国道は海岸を埋め立てたものなのか?

 地図上:3 美谷を過ぎてまもなくの出岬から横滝トンネル方向を遠望する。横滝トンネルの外側を通っていた旧道が、枯れたススキの帯となって確認できる。

 地図上:3 横滝トンネルと旧道との分岐点。このトンネルは比較的新しく、1994年に開通している。

 地図上:3 須築(すっき)側口付近からみた旧道。旧横滝トンネルが見える。ふさがれることなく今でも通れそうだが、その手前の道路部分はすでに落石などがあるようだ。

 須築トンネル美谷側口にある”藻岩の滝”。冬季間はご覧のとおり氷結してしまう。

 地図上:4 横滝トンネルを出てすぐの出岬から藻岩岬を遠望する。右に須築トンネルが見えるが、1969年の完成までは岬に沿って旧道が通っていた。

旧道は今でも痕跡がわずかに残るが、岩盤を均しただけの安易なものでクルマが通れるような道ではなかったようだ。名だたる磯釣りポイントとあって、岬先端部へのアクセスとして釣り人には今でも利用される。

須築

須築漁港手前の尾根を越える旧道。現在はすぐ隣を深い切通となって走っているが、以前は海側の低くなったところを登っていた(マップ赤線部)。

ページ中使用している地図は、国土地理院発行の2万5千分の1地形図『左股』『瀬棚』『カスペ岳』『須築』を縮小加工して使用しています。

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