【旧道フォトグラフス】・旧道に所縁のある一枚のカットを巡る小さな旅。

Vol、5   濃昼山道の石  (石狩市 旧厚田村 濃昼山道)      カット 文 ・ 久保 ヒデキ

(注・平成一三年執筆)

濃昼山道の石  (石狩市 旧厚田村 濃昼山道))

カット 文 ・ 久保 ヒデキ

 

 濃昼山道は近年まで、北海道でも一、二を争う通行の難所であったという。しかも、それは車道ではない。もともとクルマなどとは縁のない、「歩くための道」だった。だが昭和初期の道路地図には、はっきりと『国道231号線』と記載されている。つまり「歩く国道」なわけだ。まったくもって驚きである。どこへ行くにもクルマを使う文明ボケしてしまった身には、当時の人びとがこの山道を徒歩で往来する姿を想像することさえ、難しい。今ならわずか数分で通過してしまう安瀬~濃昼間も、当時は片道を一日がかりだったわけだから。

 近年、この山道を保存しようとする人たちの努力で曲がり笹など下草が刈られ、ずいぶんと歩き易くなっている箇所もある。だが、険しい急斜面と時々現れる不条理な九十九折は昔のままだ。その山道でしばしば見受けられるのは、直径にして五センチから一〇センチ程度の硬石である。あるところはせまい道路上に敷き詰められたようになっていたり、またあるところは路肩を支えるかのように積み上げられていたり・・・。明らかに作為的に撒かれたものだ。そして、そのほとんどは苔生して、永い時の流れを物語っている。

 

 これを、山道が現役だった時代からあったものだと断言できる証拠は、何もない。しかし、当時の人々の苦労を思いながらこの旧道を歩き、時代を超えて『道』を共有する愉しみ、みたいなものを、この苔生した石に見たような気がしたのである。

ⒸhiDeki (hideki kubo) 2001           Contact ・ st-pad@digi-pad.jp

 

ご注意・この北海道旧道保存会ホームページ『裏サンドウ喫茶室』では、寄稿者の方々の研究成果を発表しています。掲載の文・カット・図版等はそれぞれ著作者の権利が保護されています。無断で他の媒体への引用、転載は堅くおことわりします。当ホームページ掲載の地図は、国土地理院長の承認を得て同院発行の当該地域を含む5万分の1地形図及び2万5千分の1地形図、数値地図25000及び数値地図50mメッシュ(標高データ)を使用、複製したものです。<承認番号 平13総使、第520号><承認番号 平13総複、第390号>このホームページに掲載されている場所は、自然災害や経年変化などで取材時よりも状況が著しく変化している場合があります。