【旧道エッセイ・堀 淳一紀行集】

Vol、9 半分蓬髪(ほうはつ)半分美髪の珍種旧道 ~花石峠越えの国道二三〇号旧道      堀 淳一

半分蓬髪(ほうはつ)半分美髪の珍種旧道

 ~花石峠越えの国道二三〇号旧道

堀 淳一

国土地理院発行 二万五千分一地形図『美利河』(平成13年修正測量)、『今金』、『八束』 『ルコツ岳』(昭和63年修正測量)を縮小合成。

なお、地形図上のほぼ中央で途切れている国道230号線は、2002年夏の時点で旧道に沿って住吉まで完成、すでに共用開始されています。

 はじめ、西から花石峠に登って、東へ降りようと考えた。

 峠路の西側の入り口は、北住吉バス停から約一.四キロの、上ハカイマップ川の南岸。

 そこまでの旧道は、現国道の築堤の南側の裾にぴったりと張り付いている狭い簡易舗装路で、坦々と歩けた。が、上ハカイマップ川の直前で、プッツンしてしまった。その先は深いヤブだ。

 国道に登って見下ろすと、ヤブの先にあったはずの旧道の橋はきれいさっぱりとなく、橋の先の旧道も、みごと「藪の中」だった。峠から西北西に下ってくる支谷の出口に近づくと、ヤブは薄くなった。国道を降りて、それをたどる。しかしヤブはまた忽ち深くなり、それでも何とか道の跡らしい線をさぐりさぐり進んでいったが、二〇〇メートルほど行ったところで、どこが道だったのか、皆目分からなくなってしまった。

 これ以上行くのは危ないな。この先旧道は川からいよいよ離れて、段丘崖をヘアピンで登り、平坦な段丘面上に出るはずだ。上がってから方向を失ってヤブを抜けられなくなったらヤバい。付近の山は低くなだらかだから、はっきりした目標もないのだ。コンパス?いや、コンパスだって当てにならないことが間々あるのだ。

 天気もいいとは言えない。一〇月なかばの黒雲垂れ下がる日。風も寒い。ヤブの中で雨に降りこめられたら、いよいよミジメだ。ムリはやめよう──

  北住吉にもどる。折りよくバスが来た。それで旧道東口へ(停留所はないけれども、ありがたいことにここのバス、フリー乗降なのだ)。

 と、なあんだ、東側の旧道はなぜか、よく整備された砂利道だった。しかも紅葉が、チラホラと色づいているだけだった西口のそれとはまったくちがって、まさに酣(たけなわ)。一歩入るともう、燃えるような緋色が、行く手から招いていた!

 その緋色を過ぎると、道は草と落ち葉を敷く心地よい轍道となり、紅葉はいよいよ華やかさを増した。草の若芽色の中に散らばる落葉の金茶。緋に加わったマリーゴールド、柑子色、シャルトルーズイエロー、シャルトルーズグリーン、レモンイエロー、クロムイエロー、などなど。

 そんな絢爛の彩の一つ一つに眼を細めながらの登りは、ほぼ等高線沿いでラクラク。距離もたった一.四キロで、ゆっくり歩いてもなおアッという間、二〇分もかからずに峠に着いてしまった。

 峠はひろやかな谷頭部にある。そのためシリベシトシベツ(後志利別)川南岸のオーキッドミストの丘なみと、その裾の微細な秋色のパッチワークとを望む、おだやかな展望が開けた。中景は、前記のようなさまざまの秋の彩りを、サイズを縮め、一堂に聚めて谷を埋める森。そして前景は、明るいコバルトグリーンのササと白茶のススキの穂のむらがり。

 いつのまにか黒雲を雨の気配とともに追い払っていた明るい空の下の、いい眺めだった。

 峠付近の緩斜面は、白緑のササと薄茶の土とを交互に重ねた縞模様。よく見ると、薄茶の横帯の中に、スプルースグリーンの稚樹が、点々と並んでいた。東側の旧道がクルマの通れる状態に保たれているのは、どうやら峠付近で行われている植林事業のおかげであるらしかった。

 峠を越えると道は荒れはじめ、一〇〇メートルばかり行ったところで、ギッシリとつまったササヤブの下にもぐってしまっていた。その先を見渡しても、道の痕跡らしいものは糸筋ほどもなかった。

 やはり西口からあまり入りすぎないでよかった!

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