【旧道エッセイ】・北海道旧道保存会メンバーによるリレーエッセイです。

Vol、6  線路沿い植物学   石田 佳奈子

旧天北線沼川駅跡。駅名標を慕って群がるルピナスの大群

(堀 淳一)

 なにしろ夏の暑い盛り半袖で優雅に Stand By Me(廃線歩きの事です)を楽しもうと思っている我々の前に立ちはだかる、身長より高く成長したイラクサ、キイチゴ、ハリギリ、タランボetc、さらにヤブに隠れて、まるでワナのように待ち伏せる牧場のバラ線達。時には電柵さえも・・・。堀先生の本の中で「度胸女」とまで書かれた私でも多少ひるみますよ、アレは。でも今さらながらよくよく考えると、コンターサークルの皆様は長袖に軍手、帽子、ナタなど万端装備なので問題ないかもしれませんね。

 なーんてエラそうなタイトルをつけてしまいましたが、廃線跡で出会った植物についてただ徒然に書いてみようかなという程度ですので、あまり専門的なことは期待しないでくださいね。

 ではまず、一口に線路沿いの植物といっても、季節や地方、地形によって全く異なるわけですが、一般的には「ツル性の植物が多い」、「トゲのあるものが多い(バラ線を含む!)」という事です。尤も私もすべての季節にすべての廃線跡を歩いた訳ではありませんが、経験上、これらを踏まえて結論を出すならば(早すぎる!)、

「真夏は避けろ!!」の一言に尽きます。

 

  線路沿い植物学

           石田 佳奈子

旧幌内線跡 (久保 ヒデキ)

 さて、植物の話に戻しましょう。先ほど紹介したトゲ植物ですが、山菜やら木の実やら食用になるものが多いですね。また、線路沿いは日当たりが良いため、特に北側の林の縁には山ブドウやマタタビ、コクワ等つる性植物や桑の木などもよく見かけます。季節を選んで行くと思わぬ収穫物がどっさり・・・ なんて事もあるかもしれません。私はある年の五月、白糠線を歩いて、野イチゴの花をたくさん見つけました。そして七月イチゴ狩りStand By Meを決行!! 予想通り真っ赤なイチゴがたーくさん! 夜には上茶路駅のホームにテントを張り、摘んだイチゴで早速ジャムを作り、次の日の昼、鉄橋の上でおいしくいただきました。

 

 「おいしいものもいいけど、きれいな花が見たいわ」という方に、次は花いっぱい廃線情報です。私が歩いた中で最もお花畑に近かったのは六月の幌内線です。幾春別から歩き始めるとすぐに広がるマーガレット畑!! 民家の庭から生命力の強いフランス菊が線路跡にまで勢力を広げたんですね。白い花びらにまぎれるように咲くルピナスや色とりどりの園芸種。そして集落を過ぎると、羊の耳のような手触りのビロードモウズイカがあちこちににょきにょき。弥生駅か唐松駅かは忘れましたが、ホームの下にはかわいい黄色いホソバウンランの、金魚のような花がたくさん咲いていました。

 八月の瀬棚線の瀬棚側一キロメートル辺りはクズの紫色のこんもりとしたマメ科特有の花が夏を感じさせてくれます。七月の深名線鷹泊駅のドクダミに、幌加

旧根室本線狩勝信号場跡のお花畑 (堀 淳一)

内盆地一帯に広がる白い海原のようなソバ畑。素敵な風景はまだまだありますが、これからも、もっともっと歩いてお気に入りの風景を増やしたいですね。

 廃線跡独特のあの風景は、自然界において、短い歴史の中で人間が作った文明の興亡とそれに勝る自然の回復力、さらに再び人間のもたらした帰化植物や園芸種、帰化動物と在来種達が織り成す、実に不思議な自然です。私たちは運良くそんな風景が見られる時代に生まれ、生きています。

 

 もし、あと一〇〇年早く生まれていたら? あと一〇〇年後に生まれることになっていたら? こんなにも興味深い多くの廃線には出会えなかったでしょう。

 廃線歩き!!まだまだ旬です!!今のうちにたくさん味わっておきましょう!!

 では、皆様。どこかの廃線か廃道か、はたまたへんぴな地でお会いしましょう。

See You!

 

 (写真と本文は直接的関係はありません)

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