【旧道エッセイ2nd】・北海道旧道保存会メンバーによるリレーエッセイ 道外版です。

Vol、5 H16年7月 七面山山行  相澤 均

 元祖予讃線に沿った旧国道をまた歩きたいなと思ってその辺りの地形図の一枚を眺めていた時のことです。これはまたどうしたことだろう、道路から離れた山裾にぽつんと水準点が描かれています(二万五千分一「上灘」の一部を図に示す)。その場所は伊予大平駅の北北西約四五〇m。コンターサークルsを主催される堀さんにお尋ねすると壊されるのを防ぐ為に神社、学校或いは公園に設置することがあって二〇箇所くらいはみつけていらっしゃるそうです。ちょっと興味をそそられますね。そこで今回は新旧線の分岐点向井原から内山線へひと駅寄り道をすることにしました。

道から離れた水準点

浅倉 寛行

 内子へ抜ける犬寄峠に向かって上り始めた列車から「水準点はあのあたりかな」などと谷筋を眺めるのもつかの間、築堤の途中に乗っかった伊予大平駅に着きます。なんにもない駅前から家並が描かれている旧国道らしき川沿いの道を行くと程なく五六号線にぶつかります。が、おやT字路の筈なのに狭い道が一人前の一時停止の標識を添えて続いているではありませんか。よその家の庭ではあるまいねとおっかなびっくり入って行くと少し上ってから右へ折れて等高線に沿うように延びています(写真1)。 そしてなんと下草だらけの山肌からすっくと「一等水準点」の標識が立っているのをみつけて少しびっくり、隠れた標石のありかを教えてくれたのです(写真2、3) 。もう地形図にも認知してもらえなくなった旧道の名残りなのでしょう。これが道のない山の中腹に描かれた謎の答だったとは、楽しい寄り道となったものです。

写真1

写真2

写真3

写真4

写真5

 それでもここまではまだ人が入って来ているようなのですが、その奥はクモの巣が十重二十重に道をふさいでいます。拾った小枝で一つひとつ払いのけながら進んで行くと木立が途絶える所へやって来ました。眼下には国道、少々遠目に先ほど乗ってきた内山線の築堤が望めます(写真4)。  稲穂を既にサナにかけて干していますからずいぶん早い刈り入れだなと感じます。"気候温暖な地"は思いこみでしょうか?  はやりの「こしひかり」ならば元々東北地方の為に品種改良されたので育ちが早く時期は合うようです。だんだんと足下がひどくなり、簡易舗装もぷっつり切れて道なのか段差なのか判らなくなって来ました(写真5)。

 ちょっと上り気味に続いている様にも見える道は、山の斜面を使った果樹園の中にとうとう消えてしまいました。いや、もう少しつっこんでみるべきなのでしょうが・・・

 さてどうしよう、ちょいと先にみかん積出し用の錆びたラックレールがあるのを手すり代わりと幸いに足下の滑りをカバーしつつ国道べりへ降りることができました。暫く歩くと神社が現れておよその位置が知れました。消えた旧道はどのように辿っていたのでしょうか。北西の「曽根」と記された辺りには現国道からちょっと離れて家並があり更にその先で1本線の細道が

写真6

山裾を辿っていますからきっと同じような高さで続いていたのでしょう。

 さあて私めはまた東側の裏道に入り込み、向井原へ戻る道すがらでもう一つの水準点を探してみることにします。この裏道も"旧道"と言えなくもなく、山裾に消えた道は旧々道と呼ぶべきでしょうか。「大道寺」の南で向きを変えて銭尾峠から来た道と合流して北東へ抜けているのが旧々道で、今歩いている道と重なってくるとも考えられます。(古い地図を調べれば良いのでしょうがすみません)

高速道をくぐって細く上りにかかった辺りにこれまたちゃんと標識が立てられて、今度は守り石もがっしりと水準点の無事な姿が見られました(写真6)。(「市場」の文字の西側です)。ただこちらは「一等」の二文字はありません(写真7)。

 松山から一〇時以降の最初の旧線廻りは一一:五七、ホームに上がれば列車が来るにはまだ間がありました。この日は下灘から歩いたのですが、そのお話は機会があれば改めて。

 尚常国女史(裏サンドウ喫茶室の別のページにお名前がありますので御一読下さい)のおかぶを奪うつもりは毛頭ありませんので悪しからず。

 

浅倉 寛行  (現地探訪:二〇〇三年九月)

写真7

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