定山渓鉄道資料集

【定山渓鉄道沿線百話 その七六

 「ポートレート×定鉄沿線 白糸の滝」】

 

 

 定山渓発電所に導かれる発電用水は、温泉街よりさかのぼること約一キロほどの、両岸からせり出す大岩が川の水を細める様子から、「銚子の口」と呼ばれた瀑布より、エゾヒノキの樋を通して送られてきます。そのすべてが発電に使われるわけではなく、一定水量を超えた場合にはその余分な水を発電所外へ流す必要があることから、発電用導水管の上流側に谷を切って流されました。滝の落ちる断崖の切れ目はその前から天然の崖であったと考えられますが、水を落とすにはいかにも好都合です。もしかすると、もともとあった涸れ沢を利用することが発電所建設場所の決め手になったのかもしれません。

 

 豊平川は当時、非常に流量の変化が大きい「暴れ川」でした。発電所完成後は度重なる大水の影響で建物そのものを崖下側へ移設されたこともあったようです。すぐわきを流れる白糸の滝~余水川は、もちろん当時は護岸整備などされない時代でしたので、今では考えられないほど野趣にあふれた景勝地だったに違いありません。細長く滴り落ちる滝の涼風に温泉で火照った顔を冷ます人たち、そんな情景が想像できます。時代は昭和に移り、豊平川の治水事業の一環により白糸の滝も、コンクリート囲まれた用水路然とした姿となってしまい、絵葉書に見るような当時の面影は見られなくなってしまいました。涼風が届くほどには近づけなくなりましたが、現在の定山渓に残された数少ない景勝地のひとつであることに、変わりがないのは確かです。

 

※カットは、左上が昭和二四年の国立公園指定以後に記念に作られたと思われる絵葉書。左下が平成一二年六月。右は平成二七年八月。なお、定山渓発電所の再整備により通路側の橋はゲートで閉じられ、観覧用の橋のみ立ち入ることができます。夜間のライトアップはありません。

 

※内容はあくまでも現時点までの研究成果による執筆者の主観です。新情報などで不定期に内容を更新する場合があります。予めご了承ください。

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