定山渓鉄道資料集

【定山渓鉄道沿線百話 その三三

 「ポートレート×定鉄沿線 おしどり淵」】

 

 人気のハイキングコースにもなっていた、おしどり淵の時代を超えたふたつの情景。

 

《過去》

 簾舞に設けられた定山渓に次ぐ豊平川二つ目の発電所。その取水口として小金湯(当時は黄金湯)に造られた砥山堰堤は、その上流に小さな貯水湖をつくりました。大正九年のこと。

 やがて昭和二〇年代になり、定山渓鉄道の黄金時代を迎えると同時にレジャーブームが訪れ、沿線にも豊平川の景勝をつないでハイキングコースができました。仲睦まじいおしどりのつがいがよく見られたことから、誰からともなく「おしどり淵」と名付けられたこの貯水湖を見下ろしながら歩くこの小金湯コースは、別名「おしどりコース」とも呼ばれました。「おしどり淵」の向こうには八険山とともに藤野の焼山を遠望する素晴らしい眺めが広がります。これは、定山渓鉄道株式会社が昭和三〇年代前半に発行した観光パンフレットに掲載されたおしどり淵の景色。

 

《現在》

 昭和四七年に、砥山堰堤の倍以上の堤体高を持つ砥山ダムに生まれ変わってからは、貯水量も増えておしどり淵も立派なダム湖となりました。樹木の植生や林道整備にともなってパンフレット写真が撮られた場所を特定するのは難しくなりましたが、木々の間から豊平川の緑色の淀みと八険山、そして特徴的な形の焼山の姿が見通せて、昔も今も変わらないビューポイントであることがわかります。かつて小金湯ハイキングコースの一部だったこのおしどり淵ポイントとその先の百松橋区間は、その後林道として整備され定山渓神威岳への登山道の一部としても利用されています。

モデル:由樹美来

 

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