定山渓鉄道資料集
【定山渓鉄道沿線百話 その三 「桜山」】
定山渓鉄道の真駒内停車場は、現在の真駒内東町一丁目にありました。鉄道開業当時は明治開拓期に開設した真駒内種畜場敷地にあたり、現在の真駒内本町付近の住民のために乗降場が置かれただけだったそうですが、昭和四年の電化後は列車交換駅として、また、種畜場の家畜輸送などのため側線が敷かれて停車場となりました。
営業廃止後、現在はその広い敷地を活かして地下鉄南北線車両基地への引き込み線が設けられています。
さて、そのちょうど裏手の小高い山は、かつてお花見の行楽客で賑わったと伝えられている桜山の一部です。
道路際の小道を地下鉄のシェルターを横目に上っていくとほんの数分で”頂上”へたどり着くのですが、眼下見えるのは真駒内東町の住宅地と、その先に地下鉄車両基地。
実はこの場所より南へ延びる、真駒内上町方面から精進川との間に連なる小高い山はかつて真駒内種畜場の放牧地で、桜の木が自生していたことから通称「桜山」と呼ばれ、花見の名所として知られていました。
戦前まではお花見電車が走るほどの一大行楽地となっていたようですが、戦後、真駒内種畜場はアメリカ軍に接収されキャンプクロフォードとなり、桜山も弾薬庫の建設などでその一部を切り崩されて桜の名所は消滅しました。
現在は五輪通より南側の山にその名を残していますが、桜が群生していた当時の面影を見つけることはできなくなりました。
『櫻山 真駒内牧場の一部で駅より一丁
春季は起伏ある丘に點在する数百本の山櫻が満開して、四圍の風光と相俟ち實に美しい、牧場の見學を兼ねて家族連れの郊外散策には札幌近郊随一の場所である。
冬季は又スキー場の好適地として緩急多様の斜面を有し、初歩者又は婦人小兒に最もよい練習場で、當社は休憩所を設備してスキーヤーの爲便を計ってゐる。』(『定山渓電鉄沿線遊覧御案内』より抜粋)
※内容はあくまでも現時点までの研究成果による執筆者の主観です。